代表からのご挨拶
話し言葉を文章に記録することは、文字とそれを記録する石材・板・紙などが利用されるようになった古代文明の時代から行われてきましたが、発話速度に追随して書記者が忠実に発言内容を記録するのは困難であり、内容の改ざんも見受けられました。17世紀以降に体系化された近代的な速記法が考案され、19世紀後半にタイプライターが実用化されたことにより欧米諸国では速記による発話内容を文章に記録することが広まりました。一方、日本では明治維新後、欧米文化の一つとして速記法が紹介され日本語速記法が誕生し、1882年(明治15年)東京で第1回講習会が実施されました。
1890年(明治23年)第1回帝国議会開設時に貴族院・衆議院両院で速記者による議事の記録が採用され、官公庁や地方自治体及び民間企業に広まっていきました。その後、1940年代に広まったテープレコーダーの出現により長時間録音と発話内容を繰り返し再生することが可能になり、速記士でなくても正確な文章化(テープ起こし)をすることができるようになりました。20世紀後半の急速な技術革新により、高品質なデジタル録音機器とパソコン・通信が活用されるようになり、広範な分野での「テープ起こし」需要が起こってきました。
しかしながら、テープ起こしを行うには、相当な国語力と文章表記技術が必要ですが、速記士のような資格認定制度はなく、テープ起こし技術者の社会的認知も低いのが現状です。テープ起こしという技術は、これからの社会変化(障がい者雇用、地方での雇用創出、少子高齢化、育児・介護離職問題)に対応でき、一億総活躍時代に向けての一つのジャンルになり得ると思っています。
そこで、この度、音声テキスト化(テープ起こし)技術の標準化を図り、音声テキスト化技術者の一定の能力基準を設けた検定制度を確立し、社会的に認知された技術者が多様な就業形態で活躍できるような社会の実現に寄与すべく、「音声テキスト化協会」を設立することに至りました。
一般社団法人 音声テキスト化協会
代表理事 小倉和三